BirthControl―女達の戦い―
それから墓碑に近付くと、遥香おはよう、と声をかける。


あの日、唯一あの場にいて遥香に会うことが叶わなかった梨央は、しばらく立ち直ることが出来なかった。


要はもちろんだけれど、梨央のそれは見ていられないほどだった。


ここまでになるにはいろんな人の力が必要だったし、梨央自身の頑張りもあったと思う。


必死にリハビリを続ける久枝も……


それを看護する妻の敬子も……


施設の住人を何とか安心して暮らせるようにと奔走する要も……


娘を失いながらその遺志を継ぐように施設で働く麻生夫婦も……


みんなどこかで遥香を思い懸命に生きているのだ。


梨央は一生懸命生きること、そしてもう女性や子供が道具にならない世の中を作っていくことが、遥香への供養になると、半年が過ぎた頃ようやく納得したのだった。


心配していた要に頼み込んで、医者としてあの施設で働く決意をしたのも梨央自身だった。


要と梨央は歩む道は違っても、それぞれ同じ目的地に向かって生きていこうとしている。


「最近はどうだい?

病人は出てないのかい?」


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