BirthControl―女達の戦い―
子供たちを送り出してから仕事に行くまでの、自分だけの時間。
しのぶは大好きなアールグレイの茶葉をティーポットに入れて少し蒸らしてからカップに注ぐ。
お気に入りの紅茶を飲みながらホッと一息つけるこの時間が、しのぶにとっては今一番の贅沢だ。
以前は専業主婦だったしのぶが働かなくてはならなくなったのには理由がある。
ある事件をきっかけに、子供に対して支払われていた給付金が廃止されてしまったのだ。
突然三人の子供を抱え、給付金をあてにした生活をしていたしのぶ夫婦は岐路に立たされた。
貧富の差が子供の数によって分けられていた世の中は一変していた。
住んでる場所を追われることはなかったし、学校などは無償のままだったけれど、やはり生活費がかかるため以前よりはるかに苦しい。
生活力さえあれば上流だった場所でさえ、子供がいなくても住めるようになっているだけに、平等といえば平等なのだが……
しのぶが働こうと決心したのには、そんな経緯があったのだ。
今では父の病院で、看護助手の仕事をさせてもらっている。