BirthControl―女達の戦い―
妻が出ていった。
(当然だ……
俺は彼女を裏切ったんだから……)
あの日のことを裕之は何年も妻に隠してきた。
だからあの時――
妻に責められて、裕之はバレた事への恐怖よりも、ようやく解放された喜びの方が大きかった。
あの頃の自分は少しおかしかったのかもしれないと裕之は思う。
妻が出ていってこの家で一人になっても、裕之は思ったよりも落ち着いていた。
悪夢にうなされることもなくなったし、逆に自分を見つめ直すいい機会をもらえたような気がして嬉しかった。
あれから4ヶ月――
妻から一度も連絡はない。
それでも行き先はわかっていたし、気のすむまで実家で過ごせばいいと裕之は思っていた。
本当は帰ってきてほしいけれど、これが裕之への罰なのだとしたら受け入れなければならない。
今日もまた誰もいない寝室で、誰の声もしないリビングで、一日が始まる。
4ヶ月の間に身につけた炊事や洗濯は、一人ぼっちの寂しさを埋めてくれた。
「行ってきます」
真っ暗な廊下に向かって呟くようにそう言うと、裕之は仕事に出掛けた。