BirthControl―女達の戦い―
言われてみればそうかもしれない。


でもしのぶの父親は明らかに政府を敵に回しているのだ。


なんかしらの制裁が、哲朗だけでなく、しのぶたちにまで及ばないとも限らない。


「それより裕之さん?

お嬢様を迎えにはいらっしゃらないのですか?」

ふいにそう言われて、裕之は咄嗟に何て言っていいのかわからなかった。


黙りこむ裕之に貴和子は容赦なく言葉を続ける。


「本当はお待ちになってらっしゃると思いますよ?

何があったのかは知りませんが、こちらにも居づらくなっているようですし……

どうか、帰るきっかけを作ってあげてください」


(居づらい……?

実家でのんびり過ごせているものとばかり思っていたのに……)


けれど自分から帰ってきてくれと言えるほどの資格が裕之にはない。


「申し訳ありませんが、僕が帰ってきてくれと言える立場じゃないんです

しのぶが戻る気になるまでいつまでも待つつもりです

あの……出来たらしのぶには僕が電話したこと内緒にしてもらいたいんですが……」


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