BirthControl―女達の戦い―
悲鳴に近い声でそう叫ぶ妻をそっと抱き締めて、背中を擦ってなだめる。


結婚してからすぐに出産し、その後病魔に犯された妻は外の世界を知らない。


この年でこれから働くなど無理だった。


文雄も働いていない今、養っていけるはずもない。


それがわかっているだけに怯える妻を前に、安心させるような言葉をかけてやることが出来なかった。


文雄は妻を愛していた。


例え子供が犠牲になろうとも、文雄は妻を守りたかった。


どうにかしてこの危機を脱して、妻と二人穏やかに暮らしていきたいと、そう強く思う。


その時、テレビから新しい情報が流れた。


少子化対策支援法が廃止になると同時に、OldHomeも廃止になるらしい。


妻を抱き締めたまま、キャスターの声に耳を傾ける。


――――……なお、OldHomeの運営は民営化し、今までのような閉鎖的かつ強制的ではなく、身寄りのない高齢者や生活に不安のある高齢者に、無償で開放すると新たに発表されました。

囲われていた高い塀は撤去し、新しい形の施設として、半年を目処にリニューアルされるということです……――――――


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