BirthControl―女達の戦い―
文雄は何故芳枝がそんなことを言うのかわからなかった。


(だって、これから何の心配もなく二人で暮らせるんだぞ?)


これ以上の名案があるだろうか?


「どうせあの子は私たちの子じゃないだろう?

礼子の子なんだ!

だったらあいつに育ててもらえばいいさ

お前が心配することじゃない

大丈夫、きっと金さえ払えば、あの施設に入れてくれるさ

前とは違って、隔離されてる訳じゃないんだし、いつでもあの子たちに会うことだって出来るだろう?」


もう文雄は芳枝の顔を見ていなかった。


自分自身に言い聞かせるように、それが一番なんだと自分を納得させるために……


自分がどんなにひどいことを口走っているのかもわからなくなっていたのかもしれない。


「あなた……ご自分が何を言ってるか……わかってますか?

私たちは自分たちの暮らしのために、あの時礼子を犠牲にしたじゃないですか!?

今度はまた自分たちのために、孫であるあの子たちを犠牲にするんですか!?

まだ幼いあの子たちを放り出してまで……

私は自分が楽して暮らしたいとは思えません……」


芳枝は泣いていた。


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