BirthControl―女達の戦い―
雨が降ってる……
まるで泣いてるみたいだと、礼子は思う。
私は一粒も涙なんか出やしないけど……と。
跳ね返った雨粒が、黒のストッキングにポツポツと水玉模様を残していく。
冷たい雨が体を冷やして、礼子はブルッと体を震わせた。
洋一は置いてきた。
一緒に行きたいって行ってたけど、それは即座に断った。
あの人を実家に連れていくつもりも、紹介するつもりも毛頭なかった。
いつまで一緒にいるかも微妙なんだから……
傘に当たる雨音が規則正しく響いて、真っ暗な道程をこっちだよと誘ってるように聞こえる。
礼子が実家に帰るのは三年ぶりだ。
もう二度と帰ることはないと思っていたそこに、こんなに早く帰ることになるなんて……
数時間前――
母が店を訪ねてきた。
どうやって調べたのかはわからない。
けれど、礼子は居場所を突き止められたことよりも、母が一人でそれを調べて、ここまで訪ねてきたことに驚いた。
礼子の知ってる母は、何でも父の言いなりで、一人じゃ何も出来ない人だったから。
あの時でさえ……
礼子を庇うことなく、父と一緒になって子供を産ませようと躍起になっていた。
それは自分たちが楽に暮らすため……
働かなくても生活に困らないため……
礼子はそのために親の道具にされたのだから。