BirthControl―女達の戦い―
「今さら何の用?」


自分でもびっくりするくらい、冷たく低い声が出た。


「あなたが私たちの顔を見たくもないだろうってことはわかってる……

あんな……ひどいことしたんだもの……」


しょんぼりしたって許さない。


あんたたちのせいで、人生を棒にふったようなものなんだから……


「だったら何で私の前に顔を出すのよ?

こんなとこまで来て、いったい何なの!?

悪いけど、私には話すことなんかないから」


「お父さんが亡くなったの」


一瞬、耳を疑った。


(……父が死んだ?

どうにかして余生を楽に暮らそうと、礼子をあんな目に合わせた父が?

ハハッ!冗談にもほどがある)


「……何で?」


「えっ?」


「何で死んだの?」


「……」


黙ってるとこをみると、病気や事故じゃないのかもしれない。


もしかしたら……


「自殺?」


どうってことないような口調で、吐き捨てるようにそう言うと、母は驚いたようにこちらを見た。


それでも礼子には何の感情も湧いてこない。


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