BirthControl―女達の戦い―
「じゃあ何なのよ!

用件があるなら早くして!

私、忙しいの」


そう言って、キッチンに向かい店の仕込みをするふりをする。


それを見て母は、小さくごめんなさい、と言いながら礼子の姿を目で追った。


「お父さんの葬儀に出てほしいの……

最期の姿をあなたにも見ておいてほしくて……」


「行かない」


母の言葉を遮るように、礼子は言い放つ。


「でも火葬したら二度と顔を見ることは出来ないのよ?」


「どうせもう二度と会うつもりなんかなかったし……

あんたにもね!」


「礼子!

お願い……

私たちのこと恨むのは仕方ないわ

でも……でも聞いて?

幼い頃はあなたのこと、本当に可愛がってた

覚えてない?

愛してたのよ、あなたのこと……

だけど……会社がうまくいかなくなって、このままじゃ体の弱い私がOldHomeに連れていかれるかもしれないって……

本当に焦っていたの……
私たちのしたことは許されることじゃないってわかってる

でも!このままじゃ、あなたもお父さんも救われない

世の中がこんな風じゃなかったら、きっとこんなことにならなかった……

罵声を浴びせるだけでもいいから、最期にきちんとお別れしてほしいの」


「……」


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