BirthControl―女達の戦い―
玄関のドアは開いていた。


白と黒の垂れ幕で周りを囲まれた中に入ると、玄関には揃えられた靴がまばらにあるだけだった。


結局、あの人は死んでも誰にも来てもらえないくらいの人望しかなかったんだと、礼子は可笑しくなった。


礼子の体を弄んだ男たちを引きずってきて、父の顔を拝ませてやりたいとも思った。


何度も何度も自分の快楽のために礼子を抱くことが出来たのは、父のおかげじゃないのか?


そう思うと、何故だかわからないけど、礼子は急に悔しくなった。


そんな思いを振り払うように、部屋の中へとズカズカ上がり込む。


リビングを通りすぎ、和室に向かうと、襖を思い切り開け放つ。


「――ッ!」


驚いたような母の顔が、そこにはあった。


母の傍には布団に横たわる父らしき遺体が、顔に白い布を乗せて横たわっている。


「礼子……来てくれたのね?」


嬉しそうに、弱々しく微笑む母を見て、何だか無性に腹が立った。


口を開いたら悪態をついてしまいそうな気がして、礼子は無言で母とは反対側の布団の傍に座る。


おもむろに白い布を取り去ると、色のない父の顔が露になった。


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