BirthControl―女達の戦い―
「お姉さん、誰?

見たことあるような気がする」


「……っ」


一瞬、言葉に詰まった。


礼子が家を出たのは、この子がまだ2歳くらいの頃だ。


覚えているはずもないのに、あの頃の自分を振り返るといたたまれなくなる。


乳も与えず、まだ自分自身が子供だったあの頃……


この子がなついてきても抱いてもやらなかった。


ただ、家を出ることだけを思って、この子達には見向きもしなかったことを思い出す。


礼子がそんなことを考えていると、母が慌てたように答えた。


「ママのお友達なのよ?

前に遊びに来たことがあるから、それで見たことあるのかもしれないわね?」


男の子は首を傾げて考えるような素振りをしていたけれど、ようやく納得したのかにっこり笑って頷いた。


「さ、じゃあお布団で待っててね?

お姉さんとお話が終わったら、すぐに行くから」


母がそう言うと、三人の子供たちは一斉に、はーい!と元気よく返事をして、寝室へと消えていった。


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