BirthControl―女達の戦い―
あの事件の後――


ここに住む誰もがショックを受け、塞ぎこんでしまったことは言うまでもない。


百合子は元気づけようと懸命に明るく振る舞った。


そんな中、新政府が立ち上げた新しい政策。


要の尽力もあり、それは見事な早さで進んでいった。


OldHomeを囲んでいた塀の撤去を始め、自由に外出も出来るようになった。


家族の元へ帰りたい者は帰宅することも自由であり、身寄りのない者はそのまま居住することも可能だった。


今までのような閉ざされた空間ではなく、開かれた施設。


それが新政府がかざすコンセプトだった。


厨房でパートとして働いていた百合子は、丸山の元で勉強し介護の資格を得ることが出来た。


今では厨房だけでなく、住人の世話もするようになっている。


医師の梨央とも連携を取りながら、充実した毎日を送っていた。


パートとして生活のために働いていたあの頃とは違う。


誰かのためや、自分のために働くことが、こんなに楽しいなんて思わなかった。


何よりも、お世話している住人の方に喜んでもらえた時が特に嬉しい。


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