BirthControl―女達の戦い―
彼女は短い人生の中で、挫折を何度も味わいながら、それでも諦めずに夢も叶えていた。


それがどのくらい大変なことなのか、今ならわかる。


挫折から立ち上がり諦めない精神は、誰かのためになればこそなのだ。


決して自己満足ではない。


百合子も遥香ほどではないが、ささやかながら挫折を味わった。


だからこそ彼女に負けないように、強くありたい。


そして人の傷みに敏感でありたい。


そんな思いから、百合子はいつも明るく皆の心を軽くするよう心がけた。


その甲斐あって、施設には笑顔が戻りつつある。


もちろん、自分だけの力ではないけれど……






「百合子……」


空気の入れ換えをしながら、ぼんやりそんなことを考えていると、そう声をかけられた。


「あっ、洋一

ちょうど良かった

ここ、今のうちに掃除しちゃってくれる?」


つなぎ姿で掃除用具の入ったキャスターつきのワゴンを押している洋一に、百合子はそう指示した。


「わかった」


そうすぐに返事をすると、ほうきでまず掃き掃除を始める。


その様子を眺めながら、百合子は1ヶ月前のことを思い出した。


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