BirthControl―女達の戦い―
仕事中、スタッフの一人が百合子を見つけるなり言ったときのことを。


「百合ちゃん、誰か面会に来てるみたいよ?

受付の人が探してたけど」


(……面会?誰だろう?)


母や妹にはここで働いていることも、離婚したことも伝えていない。


心配かけたくなかったし、迷惑をかけるのも嫌だったからだ。


そんな百合子を訪ねてくる人なんて、全く思い当たらなかった。


首を傾げながら、そのスタッフにありがとう、と礼を言うと百合子は受付へと急いだ。


正面玄関までやってきた時、そこに立っている人物を見て百合子は驚愕した。


なぜなら別れたはずの夫、洋一が立っていたから……


百合子の姿を見つけるなり、洋一は嬉しそうなすがるような目でこちらを見た。


それから、付き合ったばかりの頃のような愛しそうな声で、百合子の名前を呼ぶ。


「百合子……」


「洋一……どうして……?」


なぜ、洋一がここにいるのだろう?


それも面会だなんて……


もう一度、洋一をよく見ると、ボロボロになった情けない姿をさらしていた。


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