BirthControl―女達の戦い―
抗えないこの呪われた現実に、礼子はどうしていいのかわからなかった。


急に吐き気が襲ってくる。


父や母の話でさっきは気持ちが悪くなったんだと思っていたんだけれど……


(まさか……?)


そういえば今月は生理が遅れている。


そっとその場から離れると、二階の自分の部屋へと戻った。


ベッドに備え付けられた引き出しを開ける。


そこに入っていたのは、妊娠したらすぐにわかるようにと母が用意した妊娠検査薬だった。


しばらくそれを握り締め礼子は心を落ち着ける。


早く妊娠して今の悪夢から逃れたいと思う反面、子供を産むことへの恐怖が礼子を支配した。


生まれてきた子供が、自分と同じ道を辿る可能性は充分にある。


なのに、自分だけの都合で不幸になるのがわかっている命を産み出していいものなのかどうか……


しばらく立ち尽くしていた礼子は、意を決したようにトイレへと急ぐ。


時間を置いてから改めてみた妊娠検査薬には、赤い線がくっきりと浮かびあがっていた。


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