BirthControl―女達の戦い―
そんな場所に入るということは、死刑宣告をされたも同然だった。


一番末の娘が二十歳になった時、文雄達夫婦は67歳になる。


そこまでいけば、諦めもつくだろう。


余生を施設に預けるのも悪くないかもしれない。


3人の子供達は、幸か不幸か文雄と芳枝を本当の両親だと信じて疑わず、とても二人になついていた。


もともと二人とも子供は嫌いじゃない。


礼子のことだって小さい頃から大切に育ててきた。


まさか自分達の方から礼子を傷付け、裏切ることになるなんて、あの頃は思ってもみなかったのだから……


礼子の方も自分のお腹を痛めて生んだというのに、父親が誰かもわからない、まして望んだわけでもない赤ん坊を前にして、母性など感じるはずもなかった。


痛いくらいに張ってしまった乳房は、本来は産まれた子供に与えるはずの母親に備わった自然の原理なのに、礼子は最後まで赤ん坊に与えることはしなかった。


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