BirthControl―女達の戦い―
「あなた?ただいま
どうしたの?ぼんやりして」
幼稚園の見送りがすんで、すでに帰ってきていたらしい妻が、そう文雄に声をかけてくる。
どうやら自分が思っているよりもはるかに、ぼんやりしていたんだということに文雄は気付く。
「あ…あぁ、少し昔のことを思い出してたんだよ
あれから4年も経つんだなぁ……」
そう言ってしまってから、しまった!と思ったのは、芳枝の顔が一瞬にして歪んだからだ。
「いや……悪い
何でもないよ……」
慌ててそう訂正したけれど、時すでに遅く、芳枝は悲しみを瞳に宿して、明らかに落胆していた。
「私のせいよね……
私が子供の産めない体だったから……
あの子に……ひどいことをしてしまった」
興奮してそう自分を責める妻をなだめながら、文雄はゆっくりと言い聞かす。
「でもだからこそ俺は君を失わなくてすんだし、一応血の繋がった孫達とこうして幸せに暮らすことが出来てるんだから、後悔していないよ?
だからお前も自分のせいだなんて思わなくていい
そう思わなくちゃいけないのは俺の方なんだから」