BirthControl―女達の戦い―
(そう、俺だ!

悪いのは俺なんだ……

謝るべきなのはこの俺であって、妻じゃない)


文雄の提案に妻は渋々同意しただけのこと。


あの鬼のような選択をしたのは、文雄自身なのだ。


文雄は一生自分の罪を背負いながら、それでも妻と孫との生活をしていかなければならない。


礼子の子供達をしっかり育てること。


それが文雄に出来る唯一の礼子への償いなんだと思うしかなかった。


今あの子はどうしているんだろうか?と文雄は思う。


きちんと食べることは出来ているのか……


ちゃんと好きな相手を見つけることが出来ているのか……


あんな目に遭ったのだ。


男を受け入れられない体になっていたらと思うと、文雄の胸は痛んだ。


今、安定した生活を送れているのは、他ならない礼子のおかげ。


だからこんな風に今ごろになって思い出すのかもしれない。


あの日までは、大切に育てたはずの娘のことを……


せめてあの子が今、幸せに暮らしてくれていたらいい。


文雄はそう、願うばかりだった。


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