BirthControl―女達の戦い―
ハァハァハァハァ……
夜の町を必死に走り続けながら、誰も追いかけてこないことを確認するために、裕之は何度も後ろを振り返った。
(大丈夫そうだな……)
誰も追ってこないことを確認すると、走っていた足を緩めて、ゆっくりと歩き出す。
ようやく自宅のマンションに辿り着くと、裕之はホッと胸を撫で下ろした。
(なんてこった……
話が違うじゃないか!)
裕之はたった今、自分が犯してしまったかもしれない罪に怯えながら、エレベーターへと向かう。
乱れた呼吸を整えながら、もしかしたら自分の家庭を壊してしまうんじゃないかという思いで一杯だった。
話が上手すぎると思った。
裕之なんかを、あんな若い娘が好きになるはずがないのに……
エレベーターの壁をガンッと叩きながら、それに乗ってしまった自分を呪う。
裕之は妻や子供達を悲しませるつもりなんか、これっぽっちもなかった。
家族を愛していたし、今の生活にも満足していた。
例え、妻が子育てに追われ夜の営みが減っていたとしても、そのことに不満を持っていたわけじゃない。