BirthControl―女達の戦い―
なのに宮内の巧みな誘いに、つい魔がさしてしまった。


あの、美人ではちきれんばかりの肉体を持つ礼子が、一夜限りでいいから裕之との思い出が欲しいなんて思うわけがなかったのに……


エレベーターを降りて、とぼとぼと廊下を歩く。


あともう少しで自分の家の玄関のドアに辿り着くというときだった。


急に背後から肩を掴まれた。


振り返って見ると、そこには警察官らしき男が二人立っている。


「ちょっとお訊ねしたいことがあるんですが……

菊地さんですね?」


まさか……と裕之は自分の体が強張るのを感じた。


もう警察の耳に入ったんだろうか?


裕之はカッと目を見開き、肩に置かれた手を振り払う。


「俺は悪くない!

俺も騙されたんだ!

やめろー!!」


まだ何も言われていないというのに、裕之は警察官を振り切って走り出す。


奥にある非常階段をかけ降りながら、頭の中では絶望していた。


(もう終わりだ……

家族にも知られてしまう……

どうしたらいいんだ!!)


「うわぁぁぁーっ」


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