BirthControl―女達の戦い―
「あなた?大丈夫?」
妻の声にハッとする。
またあの夢を見ていたようだ。
ハアハアと肩で息をしながら、汗でぐっしょりになっている裕之を見て、妻が心配そうに顔をのぞきこむ。
「また悪い夢?」
そう6年前のあの日から、悪夢は続いている。
実際はあの娘が警察に届け出ることはなく、そのうち気が付くと宮内家には3人の子供が生まれ、知らない間に礼子は家を出たようだった。
それでもなお続くこの悪夢に、裕之はずっと悩まされている。
「お水……持ってくるわね?」
そう言って妻は寝室を出て行った。
家族に知られたくない思いと、礼子を汚してしまった自分の罪をいつまでも引きずりながら、裕之はもう宮内とは会うことをやめていた。
好きだった釣りもやめて怯えて暮らす裕之に、妻は何があったのかと何度も聞いてきた。
だけどその質問に答えられるわけもなく、妻にはずっと不安な思いをさせてしまっている。
よく考えてみれば、今の宮内の状況を見ると、裕之はやっぱり利用されたに過ぎない。
今、彼は3人の子供の親として悠々自適に暮らしている。
それから礼子が家を出たことを考えても、父親である宮内が、彼女に妊娠させて子供を得ようとしたのは間違いなかった。