BirthControl―女達の戦い―
雲ひとつない青空を見上げて、しのぶは小さくため息をついた。
こんなに晴れやかな朝なのに、しのぶの心は土砂降りのような気分だ。
今日からタイミングよく夏休みに入る。
しのぶは3人の子供達を連れて実家に帰るつもりだった。
駐車場からパープルメタリックのコンパクトカーを出し、マンションの入口に乗り付ける。
すでに荷造りを終えて、それぞれ大きなバッグを抱えた子供達が車の到着を待っていた。
子供達には、夏休みだからおばあちゃんちに泊まりに行くとしか伝えてはいない。
だけど本当の理由は、しのぶが夫の裕之としばらく距離を置きたかったからだった。
6年前の話とはいえ、夫が若い娘と体の関係を持っていたという事実を、しのぶはどうしても受け入れることが出来なかったのだ。
「ママぁ、おばあちゃんちで、プール入ってもいいでしょ?」
何も知らない真ん中の娘が、無邪気にそう聞いてくる。
「海美(うみ)、水着持ってきたの?」
「もちろん!!
お兄ちゃんと陸の分も持ってきてるよ?」