BirthControl―女達の戦い―
この生活を捨ててまで、裕之と結婚し、下流世帯から地道に子作りをしてやっと中流世帯区域に住めるようになったと言うのに……


あの頃、結婚には反対だった父と母の顔が浮かぶ。


二人ともしのぶを医者と結婚させたかったのだ。


何不自由なく育ってきたしのぶが、普通のサラリーマンと結婚して下流世帯から生活を始めるなんて無理だと思ったんだろう。


それでも自分を愛してくれる、嘘のつけない真っ直ぐな性格の裕之に惹かれて、両親の反対を押しきって結婚したのだった。


裕之との生活はいつも笑いに溢れており、毎日が幸せだった。


だから貧乏な生活も苦にならなかったし、子供が増えることでだんだん生活が安定することが、最初から与えられた豊かさよりも、充実しているように感じていた。


それなのに……としのぶは思う。


あの裕之が浮気するなんて、しのぶはいまだに信じられなかった。


しかも清水の妻である真希の話によると、裕之が礼子の初めての相手なんじゃないかということだった。


真希からその話を聞いたのは、つい最近のことだ。

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