BirthControl―女達の戦い―
「もしもし?
あら、久しぶりじゃない?
どうしたの?えっ?明日からしばらく?
裕之さんも一緒?
えっ?違うの?
大丈夫だけど……何かあった?
あぁそう、夏休みだもんね?
うん、わかったわ!
じゃあ待ってるから
気をつけていらっしゃい
じゃあね?」
妻の敬子が電話で会話しているのを聞きながら、哲朗は顔をしかめた。
たぶんこの会話から察するに、電話の相手はしのぶに違いない。
明日から夏休みだから、孫を連れて遊びに来るってとこだろう。
親の反対を押しきって結婚した娘のしのぶは、結婚して以来あまり実家には寄り付かなかった。
盆と正月には、一応一家で挨拶をしに顔を出しには来ているが、しのぶが夫抜きで実家に遊びに来たことは、結婚してから一度もない。
それなのに今の敬子の電話の様子だと、夫を連れてこないだけじゃなく、子供と一緒にしばらくここに泊まるような口ぶりだった。
(何か……あったんだろうか?)
けれど哲朗は敢えてそれを敬子に聞くことはしなかった。
もういい大人なんだし、自分で選んだ相手だ。
自分で解決するだろう。