BirthControl―女達の戦い―
1000人もの患者を一人でしかも一日がかりで診るのは大変な作業だ。


毎月のこととはいえ、哲朗は軽く気合いをいれる。


準備が整うと、遥香が外に並んでいた職員を一人部屋に招き入れた。


「おはようございます!
丸山先生、元気そうで良かった!

毎月、先生に会うの楽しみにしてるんですよ?」


本当に嬉しそうにそう話すのは、ここの厨房で食事を作ってくれている宮田百合子だった。


まだ24歳だというのに、この娘もまた心に闇を抱えている。


そういった女性職員の心のケアも哲朗の仕事の一つだ。


この百合子は、久枝が最近特に気にかけている職員でもある。


結婚してもうすぐ三年、いまだ子供は授からず、本来なら中流世帯になって、こんなところで働かなくてもいい頃だ。


それなのに彼女の場合は離婚までカウントダウンが始まっている。


好きで一緒になったんだろう相手と、子供が出来ないせいで離婚しなくてはならないこの時代を、久枝が嘆いていたのを思い出す。


百合子の胸に聴診器を当てながら、最近の様子をさりげなく聞いてみた。


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