BirthControl―女達の戦い―
そう優しく言うと、百合子は涙を堪えながら顔をあげて、絞り出すような声でポツポツと話し始めた。


「先生?私もうダメかもしれない……

たぶん離婚することになると思う」


そう言われて哲朗は、やはり子供が出来なかったんだなと思った。


でもそれなら一度離婚して、再び結婚してカモフラージュする夫婦もいる。


旦那さんとよく話し合って、そういう道もあるんだと伝えようとした時、百合子がそっと口を開いた。


「女の人がいるみたいなんです……」


「……えっ?」


思いもかけなかった百合子の言葉に、哲朗は上ずったような声を出してしまった。


好き同士なのに、子供が出来ないせいで離婚しなくちゃならない……


百合子のところもそうなんだと思っていた。


だが他に女性がいるとなれば話は変わってくる。


もしその女性に子供でも出来てしまえば、無条件に百合子は離婚させられ、子供のいる女性の方が立場は強くなる。


残された時間をなしにして、今すぐ離婚を突きつけられてもおかしくなかった。


「なんで……そう思ったんだい?」


とりあえず百合子の勘違いじゃないのかを確認してみることにする。


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