りある♡プリンス
さすがに歩きはキツい。
1時間半もかかった。
やっとの思いで門に辿り着くと、前の男の人が立っていた。
「…高橋様、ですね? お待ちしておりました」
「あ…はい」
ゔぅ。
慣れないなぁ、こういう対応の仕方。
ぎこちない笑顔を作り、男の人について行く。
そして、統さんの部屋の前で止まった。
「主人がお呼びですので、どうぞ中へ」
「はい…」
統さんの部屋に入るのは2回目だけど、やっぱり緊張する。
「…失礼します」
中に入ると、統さんは窓から外を見ていた。
「あぁ、まひるさん。お待ちしてました」
穏やかに笑う統さんに、あたしは頭を下げた。
「ごめんなさい! 無言で飛び出してしまって」
いくら嫌だったとはいえ、ひと言くらい言うべきだった。
「頭を上げてください。気になさらないで。…混乱するのも無理なかったでしょうからね」
「統さん…」
統さんはどこまでも優しい。
こんな素晴らしい方にあんな息子がいるなんて思えない。
仕事頑張っているお母さんのためにも、仕事頑張りすぎて亡くなったお父さんのためにも、こんなによくしてくださる統さんのためにも。
「専属メイド、やっていただけますか?」
…あたしの答えは、決まった。
「…はい! 是非よろしくお願いします」
あたしもここで、頑張るよ。