りある♡プリンス



翔さんは、1枚のクッキーをあたしに差し出す。




「あ、ありがとうございます」



受け取ろうと手を伸ばすと、翔さんはその手を制した。




「え?」



右手がダメなら左手だ!


再びクッキーを受け取ろうと手を伸ばす。



「えぇ?」



またしても、翔さんが制す。




あたしは目を瞬いて、翔さんの整った顔を見る。




「…わかりますよね? どういうことか」



そう言うと、翔さんはあたしの口元にクッキーを近づけた。




「はい、どうぞ召し上がれ」



するつもりなんてさらさらなかったけど、あたしは反射的に口を開けた。




一口大のクッキーが、あたしの口の中に転がる。


< 33 / 125 >

この作品をシェア

pagetop