パイナップルの雨 ~Rain in the Pineapple.~
それからその日の残りの講義が終わると、





私は区内のオフィス街にある本屋のバイトになる。





本屋といってもそれなりに有名なチェーン店でフロアも広い。





私の担当は雑誌類と新刊だった。





「松井さん、ちょっといい?」





シフトに入ってすぐ、フロアの本達を整頓しているとチーフの加藤さんが私を呼んだ。





「今日ね、急な配達が入ったから行ってきてもらえないかしら?」





私よりも少し背の低い彼女が申し訳なさそうに赤いフレームのメガネ越しに見上げた。





「そんなに遠くないし、カメラ雑誌を6冊届けてほしいだけなの」





けれどすぐに視線を外し、センター分けにした前髪や、後ろで緩くまとめ上げた髪をしきりに触っているのは、





私に対する苦手意識からの緊張なんだろうか。





「わかりました。行ってきます」





「よかった。本と地図をまとめてレジに置いてあるからよろしくね」





私が承諾すると一安心した顔をして彼女は歩いていった。





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