break-friend

俺を見ると

酸素マスクの中で

美代ちゃんの
口が動いた………


声は出てなかったが…



たぶん

“聖哉君…ありがとう”

って言ったんだろうな…


そう言って瞳を
閉じると…


美代ちゃんの目からは


涙がこぼれていた…。




「美代ちゃん…。

美代ちゃん…。


生きよう…生きよう…」



パンパンに腫れた
美代ちゃんの右手を


両手で強く握りしめると

俺は、溢れ出てくる涙を

止められるはずもなく


ひたすら泣いていた…。


【絶対…絶対…

絶対助かる……】



微かな望みを胸に秘め

俺は、後ろ髪を
引かれる思いで

両親と共に
病院を後にした。




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