西澤さんと文子さん
「離婚・・・どうして・・・家族のために・・・こんなに尽くしてきたのに・・・」
今にも鳴きそうな声でつぶやく父。時間が経つにつれ、酒の量が増えていく・・・
そんな父の視界にふとあるものが目に入る。それは、家族写真。まだ、創輔も智視も文子もあどけない子供だった頃の写真。父は、この写真を肌身離さず持ち歩き、これをもって世界中へ単身赴任を繰り返していた。
「創輔も結婚・・・・智視はデキ婚・・・今度は文子が離れていくんだ・・・。」
コンコン
「お父さん・・・。入っていい?」
文子が、おつまみを持ってドアの向こうに立っていた。しかし、父はドアを開けようとはしない。
「お父さん?」
「・・・。」
文子は、ドアを開けようとはぜず、ただ、その前に正座し口を開き始めた・・・。