西澤さんと文子さん
顔合わせの場所は、ホテルの中の和食レストラン。文子の父の働く会社がプロデュースしている店でもある。創輔が運転する車内は、静けさだけが漂っていた。
「本当にいいのか、文子?」
後部座席に座った文子と両親。父は、結婚式を挙げないといった文子の答えに不安を感じていた。
「うん。」
文子の口から出た2文字の言葉。その言葉を聞くたびに父の心の中に“父親として、何か出来ないだろうか?”と考えてしまっていた。
「あっ。」
その文子の声で、我に戻った父親。横を見ると文子がニコニコしながら携帯画面を眺めている。
「西澤君か?」
「うん。ホテル着いたって(笑)」
その笑顔を見て、父はまた考えてしまう。その顔を見た母が「あなた。」と声をかける。その母の顔を見ると“落ち着いて。”と訴えかけていた・・・