西澤さんと文子さん
タクシーを拾い、文子の家に向かう一行。
その車中で由美子が西澤にこう言った。
「西澤さん。文子ちゃんは、恋愛初心者だから…張り切りすぎちゃったのかも(笑)」
それを聞いた西澤は、少し照れながらこう答えた。
「俺も…初めてなんです。こんなに誰かを好きになるのは。」
「文子ちゃんは本気って事?」
「はい。って、僕はそんな・・・“遊ぶまね”はしてません。いままで誰とも関わらない…自宅警備員なんで(笑)だから、俺もある意味恋愛初心者です。」
と・・・
「西澤…さん…」
文子の小さく、今にも消えそうなか細い声が西澤の耳に入ってくる。そして、文子の顔を覗き込むと、苦しそうな顔で眠っている。
「まだまだ上がりそうね…」
「しばらくはでっぱなしだな…」
「文子さん…」
そんな心配した気持ちが漂う中、タクシーはただひたすら、目的地に向かって突き進んでいた。