【超短編】傘とアリガトウ
「薄々、こうなるだろうと予想してはいましたが、
やはりツッコミを入れさせていただきます。なんで、相合傘なんですか。」
昇降口で先輩が待っている姿を見て、やはり、と気持ちが沈んだ。
大きな傘を、一本広げて、帰ろ?と首を傾げる姿に、キュンと……。
「えー、しょうがないじゃん。傘一本しか持ってないし。って言うか、意識してくれてんの?先輩ウレシーw」
「ッチ…、ふざけないで下さい。何ほざいてやがん、…デスカ。」
危ない危ない、危うく敬語を崩してしまうところだった。
でも。
「あー、別に敬語、ヤならいいよ。」
先輩がこう言うなら。
「ねぇ、試しにタメで話してみない?」
別に…良いのかな。
「…おぉ、分かった。」
「クスッ…そいやさ、何であの時、顔出してたの?」
「ああ、あれは、苛立ってて。備品とか壊しそうだったから。」
「うっわー、お前、そういう奴か。怖―い。」
「怖いなら、大人しく傘から出ていけよ。」
「…いいえ怖くないです。ゴメンナサイ。」
なんか、不思議な気分。
「先輩が敬語になって、どうすんの。自分で、タメ口ね、って言ったんでしょーが。」
なんだろ‐。
「いやだってね怖いんだよお前わかる自分のことわかる!?」