僕の身長で愛を測らないで下さい。
山田は自嘲気味に笑った。


「ある時をさかいに、全然会いに来てくれなくなった。」


「ある時って、どんな時?」


わたしは少し馬鹿馬鹿しくなりながらも、山田のいうことを一言も聞き漏らさまいと耳をそば立てた。


「……俺と戸波先生の離婚の原因を知った時。」


「何で離婚したんですか?」


「……俺の浮気。」


「うわっ、最低。」


「お前の遠慮のなさは本当に清々しいな。」


そりゃ、爽やかな青春真っ只中の高校生だから。


わたしの周りには清い風が吹き荒れてるんですよ。


自分の教え子に、離婚の原因ためらいなく暴露する高校教師のぶっ飛び加減には負けるけど。


「でも、何で浮気?先生って、戸波先生のこと好きすぎなぐらい好きですよね。」

「ああ、戸波先生とユウ太は先生の命だ。」


……ちっとは返事を躊躇しろよ。


そんなキラキラした目して。


何か寒くなってきた。


「寒くなってきましたね。暖房がきれたんでしょうか。」


「はっ?別になんも変わってないだろ。むしろあったかすぎるくらいだ。」


…天然かっ


虚しく心の中でツッコミをいれて、わたしはもう一度尋ねた。


「何で、浮気なんてしたんですか?」


山田は小さく笑った。


「ごめんな、こんなこと話すの先生失格なのは分かってるんだけど。…上松には聞いてほしいと思ってしまう。」


わたしは赤くなったほっぺを隠すように山田に背を向けた。


「……うん。」
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