僕の身長で愛を測らないで下さい。
昼休み、わたしはアユ芽ちゃんと、今日は姫ちゃんと花梨ちゃんも一緒に、優雅な弁当タイムを楽しんでいた。


大抵の子は食堂にいってしまうから、教室はガランとしている。


「みんな、よく食堂で食べれるよねぇ、高いのに」


花梨ちゃんが天然のにじみでるのんきな声で言った。


ここはま牧場かと錯覚してしまうほど穏やかな空気が流れる。


「そりゃ、みんな金持ちだからね。」


自身もお嬢様組である姫ちゃんの冷静な返しで一瞬にして現実に引き戻された。


姫ちゃんの口調はお嬢様ぜんとした外見をみごとに裏切る。


さすがにお嬢、庶民のわたしと弁当食ってても、その弁当の中身は豪華絢爛。


しかし、弁当の中身意外で姫ちゃんが自分の外見にそぐうのなんて、山田が目の前にいる時ぐらいだ。


「……あっ」


その姫ちゃんが突如ほっぺをピンクに染めた。


他の三人はギョッとして固まる。


不吉なことの前触れかもしれない。


姫ちゃんの恐ろしさは一年生のころから(花梨ちゃんは赤ん坊のころから)嫌というほど知っている。


「やっ……」


や?


次の言葉を、わたしたちはおとなしく待った。


姫ちゃんは頬に手を添えて言った。


「山田先生の声がするぅ」


は?


わたしは生まれてはじめて椅子からずっこけそうになった。


一瞬でも怖がって損した。


山田に関わることで、姫ちゃんの機嫌がそこなわれることはまずない。


「山田の声、する?」


わたしは首をかしげてアユ芽ちゃんと花梨ちゃんに尋ねた。


「ううん、しないけど…」


花梨ちゃんも首をかしげた。


アユ芽ちゃんは眉をしかめて、


「んぅ……聞こえるかも」


さすが野生児


アユ芽ちゃんの言葉に姫ちゃんは残念そうに言った。


ロングヘアがくるんと揺れる。


「えぇっ、愛の勘のなせるわざだと思ったのに」


あなたのは野生の勘です


わたしと同じことを思ったらしく、花梨ちゃんが何かを我慢するように唇をかむ。


ツッコミをいれてやりたくてたまらない。


でもツッコんだら衝突事故起こしそうで怖い。


花梨ちゃんと心がシンクロした瞬間だった。














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