僕の身長で愛を測らないで下さい。

「ほら、聞いてみてよ、聞こえるって。山田の声……叫んでる。」


アユ芽ちゃんが世の男どもをキュン死にさせる勢いで目をパチパチさせながら、わたしを見つめた。


あいにく、わたしの体内には抗体が待機してるのでキュン、くらいで死にはしない。


「叫んでる……なんか、ゆかりぃって言ってるよ。」


「ゆかりっ⁉」


わたしは驚いてぱっと立ち上がった。


姫ちゃんも一瞬遅れて立ち上がる。


「ゆ、ゆかりぃって言ってるの？つか、どこで言ってるの？どんくらい遠いとこ？」


「ゆかりって何⁈先生の彼女？彼女？違うって言って、違うって言ってぇ‼」


いきなり興奮しはじめたわたしと姫ちゃんにあとの二人が目を白黒させる。


「ひ、姫、落ち着いて、ね？」


まずは手慣れたものの花梨ちゃんが獣と化っした姫ちゃんをなだめにかかった。


「ミミ子……」


アユ芽ちゃんは、何かを察したらしく心配そうにわたしをみながら言った。


「あのね、山田先生、なんか…近づいてきてるみたいだよ。」


……ほんとだ。


聞こえる。いつもは生徒の前では余裕ぶってるくせに山田が大声あげてる。


生徒たちも騒いでる。


ざわめきがわたしたちの教室のほうに流れてくるのがわかった。


「ゆかりっ‼‼」


やっぱ、山田だ。


わたしは廊下に飛び出した。


案の定、教師らしからぬスピードで廊下を突っ切ってる戸波先生と、それを追いかける山田がこちらに向かっていた。


戸波先生すごいな、高校大学と陸上やってたとか、そんな感じかな。


ポカンとしてそんなこと思ってると、二人はわたしなど眼中にも入れず、教室の前を突っ切って行ってしまった。


「待ってっ、ゆかりっ、俺、今度こそ、いい夫でいいお父さんになるからっ」


山田の方は息切れしてるうえに、涙声になってる。


おそらく、昼休みにプロポーズでもしたんだろう。


場所が学校っていうのがなんかシュールだけど。


で、何故か逃げられてる。