僕の身長で愛を測らないで下さい。
ある程度の否定の言葉は山田も予想していただろうが、まさか本体ごと全力で逃げられるとは思っていなかった。(わたしも思っていなかった。)


山田としては人生かけた大勝負なのに、相手に逃げられるなんて、まさに悲劇だ。


まぁ、わたしは同情する気なんてないけど。


わたしは二人を追いかけてきた女の子たちがざわざわしてる廊下で、一人微笑んだ。


「よかったね、山田。」


まだ、逃げられてる最中だし、早すぎるけど、ちょっと浸ってみたくなったのだ。


失恋の残り香に。


山田は背を向けられてるから、わからなかっただろうけど、わたしにはよく見えた。


戸波先生、笑ってた。


嬉しそうに、幸せそうに。


戸波先生だって、山田を許してあげられなかったこと、ずっと後悔してたはずだ。


失ったはずの幸せが帰ってくる。


愛する人が帰ってくる。


ふわふわする、幸せ。


でも、ちよっと照れ臭いのと、少しいじめてやりたい。


んで、逃げることにした。


戸波先生なら、ありえそうだ。








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