僕の身長で愛を測らないで下さい。
「ごめんなさい、アユ芽ちゃんから返信返ってこないの。」


わたしたちはとりあえず、本屋のお向かいさんにある喫茶店に入った。


しゃーねーからおごってやるか、という心持ちでコーヒーとケーキを二つずつ頼んだまではいいが、こっち側の餌であるアユ芽ちゃんから返信が返ってこない。


わたしはすまなそうな顔をしながら心の中で舌打ちしていた。


昨日家に帰った後、あらためて思い返してみると、ちびっ子の連れの少年をもっとよくみておけば良かったと恐ろしく悔やむことになった。


思い出せば思い出すほど、わたしの理想の王子様なのだ。


サラサラっと流れる黒髪に、あかい唇が涼しげな雰囲気とミスマッチで素敵だった。


「う……ん。いや、いいんだよ。お嬢様何だろうし、忙しいよね。って、ミミ子ちゃん?」


「あ、ごめんなさい。」


王子様とのめくるめく世界にダイブしていたわたしは慌てて謝った。


「もしかしたら、アユ芽ちゃん、今日お花のお稽古だったかもしれない。」


そういうと少年は感心したようにうなづいた。


「やっぱ、お嬢様なんだね~」


いや、花くらい庶民でもやりますがな。


「アユ芽ちゃんはお嬢様だけど、明橋の子がみんなってわけじゃないよ。わたしなんかは生粋の庶民派なの。」


「えっ、そうなの。」


少年はどんぐりみたいな目をさらに見開いた。


本当に驚いたらしい。


「ミミ子ちゃんっていかにもお嬢様って感じなのに。」


よく言われる。


ふわふわした髪や、大人しげな目元、さらに明橋の制服。


見た目だけなら、他の子たちよりわたしはお嬢様お嬢様している。


「普通に庶民よ。でも、父がわたしを女子校に行かせたがって、この辺りじゃ、明橋しかなかったの。」


「へぇ。」
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