僕の身長で愛を測らないで下さい。
「じゃあ、今からお化け屋敷の役割分担決めます。っても、前半後半合わせて四名の受付、あとは全員お化けね。」


我らが二年A組のボス、姫ちゃんがきりりと言った。


文化祭は二週間後、本格的な準備に入るのは一週間前からで、それまでに具体的な計画を各クラスでまとめなければならない。


「はい、受付します。」


「あ、ミミ子はダメ。」


受付に立候補するとすぐに却下された。


「なんで。」


「ミミ子は切羽詰まるとすぐ泣くから。」


う、それを言われると弱い。


もしお化け屋敷が大盛況になったりして、すんごい勢いで客をさばかなきゃいけなくなったりしたら。


絶対テンパって泣く。


「でも、暗いとこ怖い。どっちにしろ、泣く。」


真剣な眼差しで訴えると、姫ちゃんはよしよしとあやすような口調で、


「暗いところなら、お客さんに涙は見えないから。」

と切り捨てた。


ひどい。


「受付の一人はぜひとも、アユ芽ちゃんに頼みたいわ。」


姫ちゃんは微笑んだ。


アユ芽ちゃんはそれを聞くと


「やだぁっ」


と悲鳴をあげた。


「わたしはお化け、わたしはお化け、わたしはお化け、わたしはお化け…」


それ、あと何回言うつもりだ。


訳わからん呪文は置いといて、アユ芽ちゃんに受付をやらせるのは酷だ。


わたしにはじめてあった時、第一声が


うらめしぃぃ~


だったくらいだ。


アユ芽ちゃんは堂々と人をおどかせるチャンスだと張り切っていたのに。


同じクラスなんだから、姫ちゃんだってその様子を見ていたはずなのに。


「ぜひ、アユ芽ちゃんの美貌を受付という仕事にいかしてほしいのよ。」


アユ芽ちゃんがのどをひくっと鳴らす音が教室に響く。


ああ、ようするに客よせパンダね。


わたしをふくめ、全員が納得してうんうんうなづいた。


それにしても恐ろしい。


目的のためならクラスメイトの顔面も小道具か。







< 48 / 153 >

この作品をシェア

pagetop