僕の身長で愛を測らないで下さい。
「プライドの高さは変わらんが、雰囲気はずいぶん変わったよなぉ。入学当初から比べて。」




「……」


「一匹狼なオーラ醸し出してたもんなぁ。」


「そうですか?」


「そうだろうが。」


山田はやさしくわたしの頭をなでた。



その慈しむような感触に、なぜかまた涙がにじむ。


「明日の校内限定文化祭はご褒美みたいなもんだから、楽しむんだぞ。」


わたしはさとられないように、目を軽くおさえて涙をふいた。


「言われるまでもありません。」


「ま…そうだろうな。」


ふはぁー


ため息と笑いが混じったような変な音を口からもらすと、山田はひざをまげて目線をわたしに合わせた。


しばしわたしの顔をまじまじ見たかと思うと、


「ぷっ」


とあろうことか吹き出した。


口をおさえて笑い続ける山田に、わたしはうろんな目を向けた。


「うわー、とうとうおかしくなりましたか。アホをこじらせると怖いですね。」


山田の笑った顔が引きつる。


「もう少し、教師を敬うとか出来ないのか。」


「人によりけりです。」


「先生は悲しくなってきた。」


「そうですか、ではそろそろわたしは退散します。さようなら。」


たまらない気持ちになってきて、わたしは早口で言葉を紡ぐとさっさっと歩きだした。


「おう、気をつけて帰りなさい。」


後ろで山田が叫んだ。


「……はい。」


誰にも聞こえないくらい小さな声で、わたしはそっと返事をした。


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