僕の身長で愛を測らないで下さい。
文化祭二日目。


わたしとアユ芽ちゃんは誰よりも早く教室に入った。


これからこの清潔感に満ちた教室が、姫ちゃんのサド心あふれる恐怖の館へと変貌を遂げる。


「昨日は楽しかったねぇ。」


うふふ、とアユ芽ちゃんがお嬢様っぽく笑った。


「楽しかった…のか?」


わたしは机の上に座って、足をぶらぶらさせながら苦笑った。


「楽しくなかったの?ミミ子は。」


「楽しかったけど、疲れた。」


学内密封状態で行われる、明橋女学館の文化祭一日目はある意味、二日目よりはるかに恐ろしい。


毎年けっこうな有名アーティストが女学館を訪れ、理性をかなぐり捨てたお嬢様たちの妄執と遭遇することとなる。


そして心に傷を負って去って行く。


秘密の花園に響き渡るのは、乙女の笑い声ではなく、乙女×うんびゃくの悲鳴というわけだ。


一応座席が設置してあるのだが、活用しているのはわたしくらいのものだった。

わたしは立ち上がって跳ねまくってるお嬢様方に囲まれて1人小さく席にうずくまっていた。


「ミミ子って騒ぐの好きじゃないもんね。」

「うん。」


朝の静けさが身にしみる。


今はただ、穏やかな光に包まれていたかった。


「お化け、頑張ってね。」


「……」


「ミミ子?」


「ヒ、ヒヒヒヒヒヒ」


「…また、壊れたの?」


日の光を浴びていられる今のうちに光合成しておこう。


















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