僕の身長で愛を測らないで下さい。
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「ミミ子、忘れ物。」
ちっ。
わたしは心の中で舌打ちした。
もう忘れていると思ってたのに。
そんなわたしに姫ちゃんは素っ気なくソレを渡してくる。
「姫ちゃん」
「なぁに?」
「これはひょっとこだよね、やっぱり。」
「もちろん、それ以外の何に見えるって言うの?」
いや、すましがおで諭されても。
姫ちゃんからわたしに手渡されたのはやたら高価そうなひょっとこのお面だった。
いつぞやか、はた迷惑な誰かが家から持ち寄ってきたのだ。
これせっかくだし、ミミ子付けてね。
やだよ。
いや、付けてね。
だから、やだって。
付けろ。
やだっつってんだろう。
不毛な応酬の記憶が蘇る。
「なんでお化け屋敷にひょっとこが出現するの?」
姫ちゃんが一瞬言葉につまった。
「……さぁ」
わからんのんかい。
あと少しで文化祭が始まる。
わたしは笑いあっている幽霊の浴衣女子たちやら、カッパの女の子やら、哀れにも壁と化っした少女やらに囲まれながら、ひっそりと息を吐いた。