僕の身長で愛を測らないで下さい。
お昼をまわり、恐怖の館がいったん休憩に入ったので、わたしたちは控え室として使わせてもらっている2年B組に引っ込んだ。
浴衣とひょっとこのお面から解放され、わたしは制服姿に戻った。
楽しそうに笑いながら、元幽霊やら、元カッパやら、元壁やらが外に出て行く横で、わたしは1人弁当を取り出した。
文化祭に弁当とは悲しい気がしないでもないが、外の喧騒に巻き込まれるのはゴメンだ。
この校舎は、わたしたちの恐怖の館と、一階の美術部の展覧会にしか使用されていないから、館が休憩の今は静かなものだった。
1人でパクリとおにぎりをほおばりながら、わたしは、出店に並ぶ家族や、特設ステージで盛り上がっている男女を窓から眺めた。
風でふわっとカーテンが揺れる。
「ミミ子?やっぱここにいたんだ。」
嬉しそうな声に名前を呼ばれて、わたしは入り口に顔を向けた。
「アユ芽ちゃん、ずいぶん早く来たんだね。」
わたししかいない教室に入ってきたのはやはりアユ芽ちゃんだった。
右手に綿菓子、左手にイカ焼きとフランクフルトを持っている。
「そんなに早くもないよ。準備に時間かかるし、すぐにみんな集まるよ。」
アユ芽ちゃんはにこりと笑うと、わたしの隣に座って、イカ焼きを差し出してきた。
「はい、プレゼント。」
「いらない。」
「いや、食べてよ。」
「いらん。」
「わたしお腹いっぱいなんだって。」
「そういう時は今度から買うのを控えましょう。」
「……すんません。」
「でも、綿菓子なら、食べたげる。」
わたしはアユ芽ちゃんの右手から、綿菓子を引っこ抜いた。
「ミミ子、綿菓子好きなんだ。」
わたしはふわふわとした食感が舌の上でとけていくのを楽しみながらうなづいた。
アユ芽ちゃんの目が優しく細められる。