僕の身長で愛を測らないで下さい。
「新崎は後半の受付だったな。頑張って笑顔ふりまけ。」


「いわれるまでもありません。」


アユ芽ちゃんは冷ややかにうなづいた。


「上松はこの後誰とまわるんだ?」


わたしは肩をすくめた。


「さぁ、まあ、適当に。」


「…寂しいうえに、なんかやな奴だな。しゃあない、先生と一緒にまわるか。」


一瞬、山田の言っていることが理解できなかった。


「えぇ⁈」


わたしは飛び上がった。


いきなり宙を舞ったわたしに、山田とアユ芽ちゃんがびくぅッと反応する。


「そんな、信じられないみたいな顔しなくてもいいだろ。……新崎はそんな怖い顔しなくてもいいだろ。」


「え?え?先生が生徒と回っていいんですか?」


「ああ、まぁ、いいだろ。」


適当だな、おい。


「いやな、実のところを言うと、清掃作業を手伝って欲しいんだよ。」


「…清掃作業、ですか。」


上がっていた体温が少し下がった。


「ああ。午前からずっと清掃兼見回りをやっているんだが、一人じゃ大変でな。」


「他の先生方は?」


「区分ごとにわかれてやってるんだよ。
なんせ、この馬鹿でかい敷地だから。」


「生徒は?」


「んあー、生徒会は交代でやってるみたいだな。」


山田は教師のくせに机の上に座り直すと、手を合わせた。


「な、手伝ってくれ。」


上目遣いにこっちを見てくる。


うわ、きしょ


「だめですよ。ミミ子は午前中に仕事を終えてるんだから。」


アユ芽ちゃんがきっと山田を睨んで言った。

「だめかぁ。上松、だめか?」



「いいよ。」


ぽろりと、言葉が口から零れた。


アユ芽ちゃんがあきれたようにこっちを見た。


わたしは、

「別にすることないから。」

と再び肩をすくめた。














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