僕の身長で愛を測らないで下さい。
「フランクフルトいりませんかぁ」

「写真部でーす。体育館にぜひ足を運んで下さ〜い」

「焼きそば食いませんかぁ」


昨日は魔の集会を開いていたとはいえ、普段は、うふふ、うふふとかわいらしい音しか出さない口で、お嬢様たちは精一杯呼び込みをしている。


男どもはどの子をナンパしてやろうかと鼻息荒い。


暑苦しい。


花園にいすぎたせいで男子免疫が薄れているようだ。


ユウ太くんはいちご大福みたいで食べちゃいたいくらいかわいかったし、ヒロ人くんは何故か人間の臭いがしなかったから平気だったけど。


そういえば、ユウ太くんたちは今ごろどうしているんだろう。


アユ芽ちゃんもかくやと思われる凄まじい悲鳴をあげて去っていったが、大丈夫だったのだろうか。


わたしはちらりと山田を見上げた。

黄色い声をあげる他校の女子高生に曖昧な笑みを見せている。


やっぱり全然似てない。


ユウ太くんなら、恥ずかしがりながらもデレデレとした表情を隠せないはずだ。

「あら、どうして上松さんもビニール袋をもってるの?」

まわりの騒がしさに負けまいと誰かが大声で叫んだ。

声のした方をみると、いつもどおり髪をひっつめている戸波先生がこちらに向かっていた。

労働のせいか少し横の髪がほつれている。
顔が上気して、いつもと受ける印象が違う。

「ビニール隊の生徒は生徒会役員のものだけでは?」


真面目な顔をして、山田を見据える。


いや、やっぱいつもの戸波先生だ。


真面目で口うるさくて、どっかぬけてるこの感じ。


そしてわたしはいつのまにかビニール隊に入隊してたのね。


「えっと、上松にはちょっと手伝ってもらって……なあ、上松。」


山田がしどろもどろになりながら大きく両手を振る。


いつも余裕な笑みを浮かべている山田が、何故か戸波先生の前では情けなくなるようだった。

……苦手、なんだよな。



< 74 / 153 >

この作品をシェア

pagetop