僕の身長で愛を測らないで下さい。
「あやまんなくちゃ、館に戻ろう。」


「戻ってもっかい館ん中入って自分の足にしがみついてくるひょっとこお面のミミ子ちゃんに謝るの?」


「…うーん、やっぱ、後にしよう。」

再びあの教室に入るのは勘弁したい。


正体がミミ子ちゃんだと判明してもなお、あのぺとっと音がしそうな布越しのおぞましい感触が脚に残っていて、とても正気でいられそうにない。


ヒロ人がうーんと伸びをしながら言った。

「あとで迷子の放送かけてもらおうよ。」

「…迷子放送で高校生を呼びだすのか。」

やめてくれ、それは切実に屈辱なのだ。


ミミ子ちゃんのプライドが汚染される。


俺が最後に迷子放送で呼び出されたのは中一のとき。


普通、迷子放送使用するのは小学校低学年のお子様が限界だろう。

しかし、俺の過保護なじいちゃんには、そんな常識は通用しなかった。

適当にショッピングモールをうろついていたら、突如自分の名前が放送で流れた時の恐怖、事務所に出向いた時に周囲から突き刺さってきた視線の痛さ、屈辱。


「やめてあげよう。」


俺は真剣な眼差しでヒロ人をさとした。



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