僕の身長で愛を測らないで下さい。
今思えば、俺は完璧お母さんに懐柔されていた。


自分の変わりに、息子に料理をさせ、掃除や洗濯をさせた。


自分から別れたくせに、まだお父さんに未練タラタラなお母さんの傀儡として、俺は送り込まれていたのだ。


お母さんにベタ惚れているのに(現在進行形)何の気の迷いか浮気なんかしやがったお父さんと、負けず嫌いなお母さん、どっちがよりアホだろう。


アホウな似た者元夫婦のせいで、俺は迷惑こうむっている。


俺は、高校一年の夏まで、離婚の原因がお父さんの浮気だとは知らなかった。


魔王云々を聞いたせいで、俺は無意識にお父さんは悪くないと思ってしまっていたらしい。


ある日曜日、俺はお父さんのマンションから帰ってくると、疲れてカーペットの上に寝っころがった。


台所で何かを炒める音がして、俺は何の気なしにお母さんに話しかけた。

「ねぇ、お母さんとお父さんって何で別れたの?」


晩御飯の支度をしていたお母さんの手が、一瞬ぴたっと止まった。


再び動きだすと、何でもないことのようにあっさりと言った。


「…浮気よ、お父さんの。」


ガーーン


俺の中で鐘が鳴った。


もう何年も前のことだし、そうショックを受けることでもないのかもしれないが、俺は傷ついた。


「てゆか、ユウ太知らなかったんだ。」

知らなかったよ。


俺、浮気なんかしやがった色ボケの世話甲斐甲斐しくしてたのか。


「ふざけんな」


この時、俺のキャラは無残に崩壊していたと思う。
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