TABOO Ⅹ~優しくて冷たい雨音~
あれ…?
学校が終わり、真っ直ぐ家に帰る途中のバス停で、見覚えのある顔を見掛けた。
「こんにちは。覚えてますか?」
傘を差し掛けると驚いたように振り返ったのは、弟の友達。
まだ新しい制服が降り出した雨に濡れて、キラキラと光っている。
「良かったらどうぞ」
あたしの傘じゃ小さいかもしれないけど、ないよりはマシだ。
「いいです。お姉さんが濡れるし」
「大丈夫だよ?家すぐそこだし」
なかなか受け取ってくれない彼にどうしようかと考え、
「じゃあ、バスが来るまで一緒にいる」
そう言って隣に並ぶと、
「ありがとうございます」
困ったような顔に、ようやく笑みが浮かんだ。