『さよなら』から始めよう



三十過ぎた男 ふたり
陳列する自転車の前


意味もなく通り過ぎる車を眺め
煙草を吸っていても
らちが明かず


「ちり紙 買って来いよ」


痺れを切らした高野が
煙草を地面で踏み潰す


「近くで買うから いい」


高野は無反応のまま
両手を組み夜空へ突き上げ
首の骨を鳴らし


「移動すっか」


活気ある若者の集まる場所には
居場所が見つからなかった



< 18 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop